ワールドカップ、夢のあと その2

 選手たちの失意と歓喜、観客の歓呼の声、
これが、ワールドカップなんだな。 


 特に印象に残ったのは、フォールしたあとの選手が、スタートに降り立ったあと、
しばしの間、自らが越えられなかった核心部を身じろぎ、瞬きもせずに見上げている
その姿だった。 


その目は、すでに次の試合に向けての新たなトレーニングメニューを考察しているようにも
感じられた。 
そしてそれはまるで求道者の姿のようだった。


 会場の熱気と興奮で、ぼうっとなった頭をなんとか冷まして、
男子決勝のオーダーを眺める。 


男子決勝進出者は、8名、うち7名が、5.13d/5.14aと言われる準決勝のルートを完登。 


日本人選手は、Anma Sachi だけが決勝へ進出。およそ60手ほどのendurance系ルート。 
世界のトップクラスは、この程度のendurance系のルートでは、ビクともしないようだ。


 試合の展開にあれこれ想像を巡らせているうちに、会場内のざわめきが高まり、
男子決勝ルートのオブザベーションが始まった。 


それぞれの選手が、遙かな高みを見上げながら虚空に翳した両手をゆらゆらと
動かし続けている。
その姿が会場内に低く流れるBGMの通奏音と相俟って、まるでなにかの呪術のようにも見える。


 1番手、Anma Sachi 。
普段、ジムで見かける彼とはもまるで違う彼がそこにいた。


世界の超人たちと戦う彼もまた超人だった。
落ち着いた動き、壁の傾斜が変わり始めるあたりから明らかにそれまでとは
違う厳しいムーブの連続。


躊躇、動揺、決断。全てのことを瞬時に判断しなければならない。
迷っていられるほど長時間保持できるホールドなど存在しない次元なのだ。 


そして取捨選択し、ムーブを起こすがフォール。 
死力を尽くした末の結果。ロワーダウンの時の清々しい笑顔が印象的だった。 


 2番手、Son Sang-Won 、3番手、Millet Sylvain、4番手、 Crespi Flavio 、
ともにAnma Sachi と同様に核心部と思われる部分でフォール。


 5番手、Mrázek Tomás 。大柄の体躯に派手なタトゥ。
今シーズン、岩場では、5.14aをオンサイトし、5.14c をレッドポイント。
ワールドカップ・ボルダリング・コンペでも表彰台に立つ実力者。 


力強い登りとリーチを生かしてグイグイと高度を稼ぎ、あっという間に核心部へ。 


未だ誰も越えたことのない核心、観客全員で固唾をのんで見つめる。 
しかし、Mrázekは、エッ!と思うほどいともたやすく越えていく。


観客からどよめきが起きる。その瞬間、スタンスから足が切れ、体は大きく振られた。
しかしその強烈な保持力は、左右のホールドを捕らえたまま離さず、さらに引きつけ、
次のホールドへと向かう。 


その時、Mrázekは、観客席に向かって握り拳をあげてアピール、歓声は最高潮に達した。
そこからは、乳酸に抗しながらノーレストで突っ込んでいく。
一手保持するごとに、悲鳴にも似た声援が轟く、そして目映い光が突然かき消えるようにフォール。


 6番手、Lama David 、7番手、USOBIAGA LAKUNZA Patxi 、
8番手、今期世界ランキング二位のJulian Puigblanque Ramón 、いずれも核心部を越えることは
出来なかった。
 
 
 おそらく、5.14bはあるであろう決勝ルートは、完登者こそ出なかったが、見応えのある素晴らしい
内容だった。 


またいつかこの様なハイレベルな試合を間近で観られることを願わずにいられない。   
 
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準決勝のMrázek Tomás
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1.Mrázek Tomás  2.Julian Puigblanque Ramón  USOBIAGA LAKUNZA Patxi
4.Lama David  5.Anma Sachi  6.Millet Sylvain
 


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by JIJI_MOUNTAIN | 2007-10-16 23:53 | Soliloquy | Trackback | Comments(0)

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